人間を見落とすな
人間に関心があるようにして、実は、
その人間の権威に関心を寄せていたりする。
その人間が持つ経済的価値に関心を寄せていたりする。
つまり、そのような者は人間を見落としている者だ。
そこに一人の人間がいることに注目せよ。
地を這って嘆いていようが、
うずくまって虚ろになっていようが、
泥まみれで泣いていようが、
病んでいようがいまいが、
大きかろうが小さかろうが、
幼かろうが若かろうが老いていようが、
それは人間としての生を持つ、
誰人も奪うことができない生存権を持つ、
尊厳すべき、
かけがえのない、
一人の人間なのだ。
戦争では、何の罪もない人間が命を落としても、
戦争当事者は罪の意識を持とうとしない。
自国の兵士の死は「損失」として数えられ、
敵対する側の兵士の死は「収穫」として数えられる。
それは、人間を見落とした者の仕業だ。
断じて間違っている。
哀しみを遮断する者よ。
確かにその耳には聞こえまい。
その耳はもはや人間の耳ではないからだ。
人間を見落とすな。
人間であることを忘れるな。
それを忘れたとき、自分もまた人間ではなくなることを忘れるな。
ともすると誰も、自分の哀しみばかりが大きく胸に響いて、
他人の哀しみには無関心でいる。
だが、誰人の哀しみも、同じ重さだ。
あなたよ。
哀しみは今日も空に満ちていることを、
どうかどうか忘れないでくれ。
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